1. なぜ、あなたの企画、提案は成功しないのか

はじめに
1.企画、提案を出すタイミングは間違っていないか?
2.先方企業の決裁手順はわかっていますか?
3.バイヤーの行動内容、業務スケジュールを把握してますか?
4.品揃え、とは言うけれど具体的内容を知っていますか?
5.バイヤー及び店舗で行っている販促活動を知っていますか?
6.バイヤーはどんなミーティング、会議に出席しているか知っていますか?
7.新店プロジェクトの役割と活動を知っていますか?
8.バイヤーの本音をわかってつき合っていますか?
9.バイヤーが「商談」の前後でどんな対策を立てていると思いますか?
おわりに

はじめに

・渾身の力をふりしぼってまとめ上げた企画書なのに、内容には十分自身を持っていたのに、それなのに採用されない。
・やっとの事で、プレゼンテーションまでこぎつけ、出席したバイヤー、チーフバイヤーも企画の内容に高い評価を付けてくれた。しかし、その後、話がまったく進まない。
・いつもいつも口グセの様に、「なんか良い企画を出せ」、と言われ、企画書をまとめ上げて持参すると、これはダメ、あれはダメと難クセをつけて取り上げてもらえない。
・フェア企画の商談のアポが取れ、関係者を集めて出向いたら、リベートの話が大半で肝心のフェア企画に関する商談はほんの数分だけだった。

バイヤーと営業マンとの間では、こんな事例が、挙げればきりがない程にたくさんあるはずだ。
そんな時、皆さん、メーカー、ベンダーの営業マンはどうしているのですか?

・まったくあのバイヤーはダメだ!
・あの企業はしょうがない!
・ホントに流通業はレベルが低いよ!

等々、相手を批難して溜飲を下げていないだろうか。

たしかに流通各社のバイヤー、及び企業の能力、姿勢には大きな問題がある。
だからと言って、相手だけを批難していいのだろうか。それで問題は解決するのだろうか。
責任転嫁でしかない。
仮に、皆さんが提案した企画が100点満点だったとしても、それでも尚、その提案が採用されるとは限らない。
それがビジネスというものだ。

なぜか。

企画提案の採否の判定は、企画の内容だけでは決まらないからだ。
企画の内容を「基本」とすれば、その周辺の様々な要件が複雑に影響し合って、最終的な決裁が下るのだ。(図1)

 

つまり、どんなに「基本」となる「企画書」の内容が秀れていても、“周辺要件”まで含んだ「企画全体」に問題があれば、企画として採用されない、という事になる。
その事がわからないままに、「企画書」本体を、パソコンと格闘しながら何度も何度も練り直している、メーカー、ベンダーの営業マン諸君。あなたの努力は、ムダである。

もっと企画提案全体に目を向けなさい。

そこで、このセミナーの登場である。このセミナーは、企画、提案を成功させるためのポイントである、“周辺要件”にスポットを当て、どこをどうすれば、バイヤーを説得、納得させれるのか、その秘訣をさぐるセミナーだ。

第1回の今回は、皆さんの企画、提案の大きな間違い、勘違いを9ヶ条にまとめて解説する。
尚、それぞれの項目の詳細内容、改善対策は次回以降、じっくり解説する。

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1. 企画、提案を出すタイミングは間違っていないか?

皆さんは、「企画提案書」がまとまり、あとは先方バイヤーに提出するだけ、という時、そのタイミングを慎重に計っているだろうか。
プレゼンテーションのためのアポを取る電話を掛ける、その日時を決める時、考えられるあらゆる要件から最適なタイミングを割り出しているだろうか。

最近のビジネスでは連絡手段として、携帯電話が使われる様になり、それとともに“物事のタイミングを計る”、という事が忘れられかけている。
とんでもない事だ。世の中全てタイミングが大事、ましてビジネスでは。

その企業にはその企業なりの業務スケジュールがある。
スケジュールには会社全体のモノ、ある部、ある課だけのモノ、があり、この2つが決定してから最後に個人のスケジュールが決まる。業務にはルーチンとスポットがある。稀には突発業務も発生する。これら全てが混然一体となって、組織全体が動いているのだ。

外部の者から見たら、各自が勝手に業務を遂行している様に見え、とても法則がある様には見えない、と言う場合でも、その組織にはその組織なりの法則というものが必ずある。
それは人間のバイオリズムの様なものだ。バイヤーは、組織全体のバイオリズムの波の中で行動している。このバイオリズムは、バイヤー個人ではどうする事もできない。

組織全体のバイオリズムとは別に、バイヤー自身のバイオリズムがある。
俗な言い方だが、「どうも今日は乗らないな」とか、「今週は何もスル気になれない」とか、「近頃マンネリだな、何かスカッとする事がないかな」と言う時がある。反対に「今乗っているんだよ、俺は」とか、「何かを変えたい気分だね、今は」とか、「今日はヤルゾー」と言った時もある。

バイヤーは1週間の行動スケジュールをほぼルーチン化している。だからと言って1年52週、月曜日から週末まで、同じ業務をまったく同じ“ペース”で遂行する事などできない。
ルーチン業務でもそうだから、スポット業務となると、その時々の気分に左右される事が多くなる。企画、提案の商談はスポット業務に類する。つまり、バイヤーのその時の気分が大きく影響する、という事だ。

だからこそ、企画書を提出するのに、アポを取るのに最適なタイミングを計らねばならない。
そのためには、相手企業及びバイヤー個人のバイオリズムを常日頃から知っていないといけない。

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2. 先方企業の決裁手順はわかっていますか?

皆さんが相手をするバイヤー及びその上司は企業という組織の中の一員である。
バイヤーは、ともすると営業マンの前で大言壮語したり、居丈高になったりするが、なに、実のところは企業という大きな木の下に群れている一員でしかない。バイヤーが時に手柄話や自分自身の社歴話を持ち出して自慢するのは、組織の一員でしかない自分自身の哀れな立場を誰かに聞いてもらいたい、という気持ちの表われだ。つまり愚痴でしかないのだ。

営業マンは先ずこの辺の事情をしっかり理解しておかないといけない。
自分が担当するバイヤーは組織の一員、歯車の一つでしかない、という事を。

では、どう対応するのか。

相手企業の組織のあり様を把握する事が第1だ。
コーポレートガバナンス、とまでは言わない。少なくとも商品政策に関わる関連部所の把握、それぞれの部所の役割、トップの氏名、考え方までは押さえておくべきだ。

第2に具体的な案件に対する先方企業の決裁手順を理解する事が重要だ。
この時注意すべきは、案件の内容によって、決裁手順が異なり、各部所の関わり方が違ってくる、という事だ。

第3に決裁方法を知る事だ。
決裁とは言っても役所の様に全て書類検査を行う訳ではない。バイヤーと上司の口頭の会話で済む時もあれば、○○会議で議論される時もある。

第4は、決裁のキーマンは誰か、という事。
これも又、案件毎に異なるから厄介だ。最悪の場合、社長の一声で全てが決まってしまう、という会社だってあるのだ。

繰り返す。バイヤーは組織の一員でしかない。
皆さんの前では、当該部門のMDに関する「全権者」の様にふるまっていても、実はほとんど権限などないのである。

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3. バイヤーの行動内容、業務スケジュールを把握してますか?

ルーチンには、1日、1週間、1ヶ月、1ヵ年の4つの単位がある。
それぞれの単位の中で、朝一番の仕事は○○、月曜日には○○、火曜日には○○、月初には○○、月中には○○「期初月」には○○、「期末月」には○○、とか言う様にその時々でやるべき事が予め決まっている業務がルーチンである。

スポットとは、やるべき事は決まっているのだが、特に時期は決まっていない、という業務を指す。
したがって、スポット業務は、遂行する時期は別にして、事前に、こういう業務がある、と確認しておく事ができる。

突発とは、まったく予測のつかない、ある日突然に発生する業務の事である。
もっとも、まともな企業なら経営上起こり得るあらゆる事態を想定して、事前にスポット業務に組み込んでいるから、突発業務というのはほとんど無いに等しい。別な言い方をすれば、突発業務が発生する率が高い程にダメな企業、という事になる。

バイヤーは、ルーチンとスポット、及び週業務と月業務、年業務を組み合わせて、一週間のスケジュール、今月のスケジュールを組んでいる。こう聞くと、何から何までスケジュール管理された、合理的で緻密な仕事ぶりを連想するかもしれないが、実のところはまったく異なる。

月曜日にならないとその週のスケジュールが確定しなかったり、決裁の下りていた出張が前日になって急に取り消されたり、という事がよくある。

どうしてそんな事が起きるのか。それはバイヤーは、自分のスケジュールを自分だけでは決められないからだ。

バイヤーは自分の担当する部門の業務だけを遂行している訳ではない。
所属する課、グループなどチーム全体の業務の一部を担っている。

又上司の仕事を手伝う時もある。
例えば自分の上司が商品1課長だとしよう。その上司が、「役員会」で第1四半期の業務報告をする様、営業本部長から指示されたとする。その指示が出た日から、商品1課のルーチン業務は止まってしまう。課長の報告書を全課員が手分けして作成する事になるからだ。

これと同じ様な話はよくある事だ。
バイヤーの仕事は、ルーチン、スポットと予め決まっていて、スケジュール管理されていると言うのは原則の話。しかし、実際にはイレギュラーが多く、当初計画の通りにはならない、というのが実態だ。

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4. 品揃え、とは言うけれど具体的内容を知っていますか?

日本の流通業の方々は、言葉にこだわる。
事態は伴わなくても名称にこだわったり、反対に業務の内容を考慮せずに似たような名前をつけたりする。
マーチャンダイザー(MD)やバイヤー(BY)という名称の使い方はその代表だ。
この名称、もともと米国の小売業の組織名称であったものをそのまま日本に持ち込んだもの。だから、日本の流通各社の組織形態では名称と実態が一致しなくても当たり前である。
しかし、この事は名称の問題として軽く片付ける訳にはいかない。
バイヤーと呼ぼうが、マーチャンダイザーと呼ぼうが、いずれも「品揃え」が業務の中核である事は間違いない。
しかし、名称がいいかげんであることが影響して「品揃え」という言葉の概念定義まで曖昧になっているのだ。
流通業の現場では、「品揃え(商品構成)」と「仕入れ」が混同されたり、同義語として使われたりしている。
「品揃えするために仕入れする」、「仕入れた結果が品揃えになる」こんな様にとられている。

本来、「品揃え」は理論と行動に分けて考えられるべきだ。
先ず第1に「品揃え理論」があり、その理論をもとに自社の品揃えの方向性を決めたものが「商品政策」である。その「商品政策」にもとずいて、政策を具現化するための活動が一般に言う「品揃え業務」である。
「品揃え業務」の一環として「仕入れ」がある。「仕入れ」は“買う”事、つまりバイイングであり、その業務にあたる人がバイヤーなのだ。

「品揃え」と「バイイング」は本来別な事なのに、それが小売業側でも明確に区分けされていない。だからバイヤーの発言も時に、品揃えを担当するマーチャンダイザー的であったり、別の時には、買付け担当としてのバイヤー的であったり、と混乱している。
営業マンの目には、態度が変わるバイヤー、話の方向が一定しないバイヤー、と映るかもしれないが、バイヤーとはそう言う立場にある人間だ、という事を知っておけば混乱する事もないだろう。

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5. バイヤー及び店舗で行っている販促活動を知っていますか?

全ての小売業は売上を向上させる事を目的として企業活動を続けている。
しかし、売上を向上させる手法は1つではない。そこに流通業の難しさと、おもしろさがある。

メーカー、ベンダーの営業マンにとって、自分の売上を上げるには、取引先の企業の売上を上げる、それが「王道」だ(メーカーにとっては、競争先メーカーから自社へブランドスイッチさせれば、売上は上がるのだが、これは、小売業から見るとどうでもよい事に映る。
ブランドスイッチそのものは手段でしかない。その事で自社、自店の売上が旧ブランド時より上がるかどうかが問題なのだ)。

小売業が行っている売上向上のための施策とはいかなるものか、その内容を詳細に知っておく事が営業マンの販促活動にとって重要になる。現場(売場)を無視して、メーカー、ベンダーが勝手に考えた「販売促進企画書」では採用されるはずもないからだ。

販売促進=販促という言葉は、マーケティングの世界の人には“狭義の販促”として捉えられ、広告、宣伝活動を意味する言葉として使われる。しかし、小売企業側では、もっと広い意味で使われ、品揃えの改善、価格政策、サービス強化策までを含めて「販促」が考えられている。
小売業には必ず販促部というセクションがあり、この部所が販促活動というセクションがあり、この部所が販促活動の専任部所となる。しかし、この部所は狭義の販促はできても、広義の販促となると自分達だけではできない。商品部、販売部(店舗運営部)も含めた全社的な取り組みが必要なのだ。
又、狭義の販促の代表である「チラシ広告」で見ても販促部は単に“取りまとめ役”である場合が多く、チラシの品揃えは商品部バイヤーが担当している。

この様に小売業の活動の中で重要な役割を持つ販促活動ではあるが、その内容、実態は企業によって大きく異なる。この事を知っておかないといけない。

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6. バイヤーはどんなミーティング、会議に出席しているか知っていますか?

バイヤーに商談のアポを取るために電話しても「会議中」という返事で連絡が取れない事がよくある。俗に“会議の多い会社はダメな会社”と言われるが小売業はとにかく会議、ミーティングが多い。
しかし、メーカー、ベンダーの営業マンが相手企業の会議の多さを批判しても、そこからは何も生まれない。営業マンたるもの、相手の会議をこちらの営業活動に利用する位にならなければダメだ。

バイヤーがミーティング、会議に出る、という時、立場は2つに分けられる。1つは報告、発表の当事者として出席する時。もう1つは、上司からの指示、命令を聴く時。
第1の、バイヤーが自分の業務の何かを会議で発表する場合、その相手が自分より下である事はまずあり得ない。全て上司だ。
店舗スタッフが参加する会議では、職制上は自分が上席となるが、本部と店舗では、店舗の方が発言力がある事が多い(この事は稿を改めて解説する。)
したがってバイヤーは、自分が報告しなければならない会議が近づくと、その事で手一杯、頭一杯になってしまう。ビジネスマンたる者、誰だって居並ぶ上司を前に秀れた報告をして、評価を上げたいものだ。

そんな時、皆さんが、何かお手伝いしましょうか、と声をかければ“渡りに船”となること間違いない。しかし、そのためには、相手企業でいつ、どんな会議が開催されているか、把握しておかなければダメだ。
2つ目の会議の時、上司の指示、命令を聴く場合はどうか。
その会議が終わるとバイヤーはすぐに何らかのアクションを起こすのが普通だ。ただ聴くだけで終わる会議など会議とは言えない。場合によっては、会議終了後にただちに調査、分析を行い、その日のうちに上司に第一次の回答を提出しなけらばならない事もある。そんな時は、決まって、メーカー、ベンダーが関わる内容となる。

バイヤーが今日、どんな会議に出席していて、その場で上司からどんな指示が出されてるのか、そこまでの“読み”が出来る様になれば営業マンとして一人前だ。

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7. 新店プロジェクトの役割と活動を知っていますか?

小売業の全てを知るには、新店一店舗の業務を始めから終わりまで、まるごと知るのが一番手っ取り早く、そして内容が確かだ。
新店の業務は物件(出店候補の土地をこう呼ぶ)の情報入手に始まり、オープン後の反省会まで、非常に幅広い奥の深い業務で構成されている。その業務は社内の全ての部所が関わる。
それ故、新店一店舗を立ち上げ(オープンさせる事をこう呼ぶ)ると、そのスタッフは様々な経験を積み、多くの事を学び、力をつける事になる。
だからこそ、新店プロジェクトには将来を有望視されている若手スタッフが集められ、リーダーには幹部候補の中堅が任命される事が多い。

新店プロジェクトは、新しい店を一店作る、というだけでなく、他に経営上重大な任務を与えられる事が多い。
新しいMD政策の具現化であったり、従来とはまったく異なった店舗レイアウトの実験であったり、新しい店舗組織及び人員シフトの検証であったり、する。

この様に、新店プロジェクトは、小売業の社内にあって極めて重要な役割をになう立場にある。
それ故、メーカー、ベンダーの営業マンにとって、新店プロジェクトとつき合う事の意義は極めて大きい。
結果としてどれ位の効果を生み出すのか、それは次回から始まるセミナーの本編でじっくり解説する事にする。

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8. バイヤーの本音をわかってつき合っていますか?

バイヤーを含め、ビジネスマンは常に建前と本音を使い分けながら、日々生きている。
ビジネスマンに限らず、全ての日本人は子供の頃から建前と本音の世界で生きていると言っても過言ではない。
ビジネスマンの世界で最も建前と本音を使い分けているのは、いわゆる中間管理職だ。
バイヤーも組織上は中間管理職に入る。
中間管理職の場合、上司と部下の間に入って、“イタバサミ”状態となる。
それが建前と本音を使い分ける度合いが増す理由だ。

バイヤーの場合、いま一つ、本部と店舗のイタバサミ、という状況も加わる。
この場合の本部とは、自分の上司達が全て「本部」という階層として意識される。
つまり、バイヤーは二重の意味で、中間的位置に身を置いている事になる。
さらに加えて、バイヤーは外部者であるメーカー、ベンダーとの交渉窓口である。
その事によって、第3のイタバサミが生じる。外(取引先)と内(会社)、その間に立ったイタバサミだ。
内はウチ(家)に通じ、自分の家(会社)の権益を守るためには、正義に反する事も止む無し、目をつむるしかないのか。イヤイヤそうではない。外に正義がある場合、ウチの非を認め、外の正義に従うべきではないか、と悩むのだ。
この様に、バイヤーは三重のイタバサミにあって、建前と本音を使い分けざるを得ない状況に追い込まれているのだ。
しかし、優秀なバイヤー程に建前と本音を上手に使い分ける。
上手に使い分ける、とはTPOをわきまえて使うという事で、決して手のひらを返す、とか無節操とは訳が違う。

組織の中で、自分の主張を通すには、“手段”として建前と本音を使い分ける事も大切だ。
しかし同時に、相手の建前と本音をくみ取る思いやりも必要なのだ。
皆さんは果たして、バイヤーの建前と本音をどこまで理解しているだろうか。

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9. バイヤーが「商談」の前後でどんな対策を立てていると思いますか?

「商談」は戦いである。
お互い、会社を代表して自社の利益のために、一対一で戦っているのだ。
>戦いであるから当然、戦いに入る前に作戦を立て、その作戦に必要な武器や備品を調査して用意する。
食料も忘れずに準備するだろう。
さらに忘れてはいけないのが、敵に関する情報だ。
兵力、過去の戦術、指揮官の性格に関する情報まで収集する場合もある。又気象や地形の情報も重要だ。

商談もまったく同じ事が言える。
戦いに臨む時、何の準備もしないでフラリと戦場に現れるはずはない。
先ず自分の戦いの準備をするのは当然だが、相手の準備状況を出来うる限り知ろうとするだろう。
「商談室」でテーブルに向かい合った時に戦いが始まる訳ではないのだ。
戦いは、「商談室」に入る前で7割~8割は決まっていると思いなさい。

戦いが終わった後も大事だ。勝ち負けにかかわらず、今日の戦いを冷静に分析する事が大切だ。
優秀な上司(商品課長)は今日の成功を誇らしげに報告するバイヤーにこう言うだろう。
成功は結果だ。結果はもうイイ。なぜ成功したのか、成功した理由をキチンと分析しておきなさい、そうしておかないと、次回も又成功を収める事はできない、と。

ビジネスはプロセスだ。
最近「コンピテンシー」という考え方が重量視されている。まさにその通り。
優秀なバイヤー、有力な企業は、成功事例のプロセスを詳細に分析している。

以上、「企画、提案が成功しない理由」を9項目にまとめて解説した。

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おわりに

第1回セミナーはいかがでしたか。
初めて、という事もあり、書く方も、読む方も、不慣れで“まだまだ”という感じです。 今回は、皆さんの企画、提案が成功しない理由を解説しました。
次回から今回述べた9項目を1回に1項目ずつ、9回にわたって解説していきます。ご期待下さい。

第1回のセミナーを読んで、皆さん、チョット驚いているかもしれません。
「こんな事まで書いちゃっていいのかな?」「これって小売業の内部事情でしょ、マズイ事ないの?」と心配しているかもしれません。
大丈夫です。私は、小売業の内情暴露をしているのではありません。かと言って、メーカー、ベンダーの身方という訳でもありません。
バイヤーと、メーカー、ベンダーの営業マン、相方が相手の立場、相手の仕事をもっともっと詳しく、理解して欲しいのです。
そうして「商談」のムダ、ムラ、ムリを排して欲しいのです。
その上で、相方の利益に貢献する商談を確立して欲しいのです。

このセミナーは、皆さん営業マンがバイヤーの全てを良く理解し、その事で内容のある「商談」が出来る様になり、さらにその結果、売場が良くなる事を目標にする、そんなセミナーです。ですから、私も本音で書きます。私の場合、建前はありません。建前は嫌いなのです。
だから、サラリーマンを辞め、今は独りで仕事をしています。
来月から始まる本編9回を楽しみにしていて下さい。

第1回のまとめ

1. 企画、提案が成功しない理由は、相手の事を的確に理解していないからだ。
2. 相手と言うのはバイヤー個人だけではない。バイヤーを取り囲む相手組織の全てを指す。
3. 相手がわかれば戦略から戦術へ、総論から各論への落とし込みが可能になる。