1. カテゴリーマネジメントがもたらす効果    研究員 丸山正博氏

カテゴリーマネジメントのわが国での現状

カテゴリーマネジメントとは、小売業者が卸売業者やメーカーの協力も受けて、商品カテゴリーを戦略的事業単位として管理する手法である。具体的にはカテゴリー単位でMD・価格設定・棚割・プロモーション・利益管理などを行うものであり、米国で1990年代半ばに、ECR(Efficient Consumer Response)の中核的存在として普及した。

 カテゴリーマネジメントは米国では一般的な手法であるが、日本ではいかなる現状にあるのだろうか。図1は(財)流通経済研究所が今年、チェーンスーパーを対象に行った調査の一部である。図のように小売業が現状では「単品」を重視しているものの、今後の方向性としては、お客様視点の「カテゴリー」を重要な視点として認識していることが分かる。

それでは何故、小売業がカテゴリーマネジメントを指向するのであろうか?その理由はもちろん収益の増加を見込めるからである。カテゴリーマネジメントというと概念的・抽象的に言葉だけが先行してしまうきらいもあるが、この手法を実際に導入することで、売上増加と費用削減という二つの効果が得られると考える。

売上増加・・・「ついで買い」を誘う売場の括りと品揃え

売上増加という観点からは、顧客のニーズに合った商品構成を提示することにより売場全体の生産性を最大化させるインストア・マーチャンダイジング(ISM)を実施することが考えられる。
すなわち単品を重視するだけでなく、商品配置を意識してカテゴリーとして売れる状態にすることである。

例えばカップ麺を粉・麺類という「素材」関連で括るのではなく、クイックフーズという「食生活スタイル」関連で括ることで、顧客の商品探索を容易にすることや「ついで買い」を誘うことができるようになる。

また品揃えの商圏対応も有効である。
チェーン本部で画一化した品揃えではなく、商圏特性を考慮した品揃えが売上増加に効果的であることは、業績不振の大手スーパーが目立つ一方で業績好調な地場の中堅スーパーが見られることからも分かる。

費用削減・・・しかし「アイテム削減」は万能か?

費用削減という観点からは、例えばABC分析を用いて売上点数の少ない商品をカットすることが思いつく。しかし画一的なアイテム数削減は、仮に費用削減を達成できてもかえって収益機会を逸するおそれがある。その理由には二つある。

まず、顧客が商品を選択するにあたってカテゴリーごとに情報処理の特性に違いがあるからである。特定のブランドに対するこだわりが強い(ブランド・コミットメント)カテゴリーと、様々なブランドを使い比べてみたいと感じる(バラエティ・シーキング)カテゴリーとでは、店頭に陳列すべきアイテム数は全く異なると考えられる。

次に、優良顧客の購買動向に注目する必要があるからである。店舗の収益源となる優良顧客が他店へスイッチすることを防ぐため、優良顧客の購入アイテムは陳列を続ける必要がある。「全ての顧客を必ずしも平等に扱うべきではない」というロイヤルティマーケティングの視点をカテゴリーマネジメントにも取り入れることは有効であると考える。

今回アイコンセプト(株)のご協力を得て、私も含めて3名の(財)流通経済研究所の研究員が、カテゴリーマネジメントについて具体例も踏まえた報告を行うことになった。次回以降は今回指摘したような要因を中心に、カテゴリーマネジメントによって得られる効果をより具体的に考えてみることにする。