7.ショッピング・バスケット分析の具体例と、消費者ニーズに合わせた品揃え  研究員 丸山正博 氏

1. ショッピング・バスケット分析の具体例

前回までの『消費者の「買い方」』で述べた、どのカテゴリー同士が一緒に買われやすいかを集計するショッピング・バスケット分析について、下記の店舗で行った具体例を紹介する。

対象店舗:関東の食品スーパー
対象期間:2000年5月~7月の3ヶ月間
対象顧客数:約1,300人
バスケット数:29,635ケース
対象カテゴリー:食品、日用雑貨のJICFS細分類ベースの約200カテゴリー

この店舗では、(財)流通経済研究所が小売・卸売・メーカー各社との共同研究の一環で、ショッピングメイトとよぶスキャンパネルを設置し、FSPと類似したポイントカード方式によって約1,300世帯の購買履歴を収集している。

図表1のように、この店舗のショッピングメイトは40代~50代の女性が大半である。

 

図表1:ショッピングメイトの世代構成

また、ショッピング・バスケット分析の集計結果の一部が図表2である。

 

図表2:ショッピング・バスケット分析

図表2の表(上)は、乾麺との同時購買率の高いカテゴリーの一覧である。

乾麺を購入したバスケット(来店客)は、全バスケット(全顧客)の4.6%にあたる1,349バスケットあった。一方、つゆを購入した757バスケットのうち21.0%にあたる159バスケットで乾麺も同時に購買されていた。

つまり、「乾麺」は「つゆ」と同時に購買される確率が高く、「麺と麺つゆ」というメニュー関連での同時購買が行われているのである。その他の品目でも、乾麺は煮干・わさびなどメニュー関連での同時購買率が高いとともに、豆・干し椎茸など「和風食卓」というユーザー関連での同時購買率も高いことが分かる。

図表2の表(下)は同様に、ケチャップとの同時購買率の高いカテゴリーの一覧である。

全バスケットに占めるケチャップの平均購買率は1.0%であった。一方、ソースを購入したバスケットの中でのケチャップの同時購買率は8.1%であり、スパゲッティを購入したバスケットの中でのケチャップの同時購買率は7.6%であった。

つまり、ケチャップの平均購買率に比べて、ソースとの同時購買率、スパゲッティとの同時購買率は約8倍であり、「ソース」や「スパゲッティ」と「ケチャップ」との関連性が強いことが分かる。ここで「ケチャップとソース」は、調味料としての関連があり、「ケチャップとスパゲッティ」はメニューでの関連である。その他の同時購買率が高い品目では、野菜缶詰・マカロニなどメニュー関連や、オリーブ油・紅茶・調理用スープといった「洋風食卓」というユーザー関連でのカテゴリーが並んでいる。

ところで、この店舗の売場構成は、乾麺は小麦粉や天ぷら粉といった素材関連で隣接しており、つゆは別の場所に陳列されていた。またケチャップはソース・たれ、と調味料関連で隣接しており、スパゲッティはやや離れた場所に陳列されていた。

しかし、図表2の同時購買データの分析結果からは、乾麺と麺つゆ、ケチャップとスパゲッティ、といったメニュー関連で並べて陳列することや、「和風食卓」「イタリアン」といったユーザー関連で並べて陳列することも、同時購買率をさらに高める可能性があることがわかる。

現状の棚割では、バイヤーや売場責任者の担当割りを意識した仕入れベースや素材ベースでの陳列を行っている店舗も多い。

しかし、売上高の増加につなげる『店頭マーケティングにおけるカテゴリーマネジメント』では顧客の視点に立って、関連購買を促進し、買い忘れの防止につなげることのできるような、一緒に買われやすいカテゴリー同士を隣接して配置することも有効なのである。

2. 顧客ニーズと品揃え…アイテム削減できるカテゴリー、してはならないカテゴリー

費用削減のためのカテゴリーマネジメントとしては、例えば売上ABC分析を行い、カテゴリーごとに売上点数の少ないCランクの商品をカットすることが思いつく。

この点、ある程度の品揃えアイテム数の削減はコスト削減効果があるとともに、消費者のバラエティ評価にマイナスの影響を与えないという分析事例は多い。

しかし全てのカテゴリーについて画一的な商品カットをするとかえって収益機会を逸するおそれがある。その理由は、顧客が商品を選択するにあたってカテゴリーごとに情報処理の特性に違いがあるからである。

図表3は(財)流通経済研究所が行った消費者調査の結果の一部である。

 

図表3:購買時の情報処理特性

「ブランド・コミットメント」とは、特定のブランドへの愛着の高低、つまり顧客が特定のブランドに対するこだわりの強さを示す指標である。

「バラエティ・シーキング」とは、いろいろなブランドの情報を収集して使い比べてみたいという意欲の高低、つまり顧客が様々なブランドを探索するニーズの強さを示す指標である。

従ってブランド・コミットメントの高いカテゴリーは、特定のブランドについて深い情報を提供することが必要となり、バラエティ・シーキングの高いカテゴリーは、多数のブランドについて幅広い情報を提供することが必要となる。

このことから、例えばブランド・コミットメントは高いがバラエティ・シーキングの低い「たばこ」や「米」のように、顧客が特定のブランドに対するこだわりで商品を選択しており、多数の商品を使い比べることの少ないカテゴリーでは、アイテム数を一律に削減する売上ABC分析も有効であると思われる。

しかしブランド・コミットメントは低いがバラエティ・シーキングの高い「スナック菓子」や「レトルトカレー」のように、顧客が新商品も含めて様々な商品を店頭で直接手に取り使い比べてみたいという、バラエティ感が求められるカテゴリーでは、品揃えの豊富さ自体が購入意欲を高め、買上点数の増加につながっているのである。

このようなカテゴリーでは、個々の商品自体の売上点数が少ないとしても、アイテム数カットが購入意欲をそぐことになりかねない。

従って画一的なアイテム数削減は売上増加を妨げるおそれがあり、カテゴリーの特性に応じた最適アイテム数を認識することが重要となる。

この点については年明けに、流通経済研究所で私が担当して、大規模な実験を行う予定であり、機会があればいつかご紹介したい。

来月は、「消費者ニーズに合わせた品揃え」の続編として、「来店時間帯」に着目した具体的な分析事例をもとに考えてみたい。

次回は、「消費者ニーズに合わせた品揃え―来店時間帯の視点から」を掲載予定です。