MD-ing講座32

カテゴリー・マネジメントについて1

今回から、「カテゴリー・マネジメント」について説明します。「カテゴリー・マネジメント」に関する著述はたくさん出版されていますが、内容が難解であったり、実施が難しいという声をよく聞きます。この講座では、もちろん先達の考え方を基本にしますが、出来るだけ現場で実際に使える内容を心掛けていきます。

第一は、その発祥の歴史ですが、1992年に米国で発表された『他業界業態競合調査』において、あるカテゴリーに焦点を絞ったカテゴリーキラーの脅威が明らかになったことに端を発し、「店舗対店舗」の競争ではなく、店舗内のカテゴリーと、それを扱うカテゴリーキラーとの競争が浮き彫りになったとあります。

第二に定義ですが、ここでは、二人の方の定義を紹介します。

1. ブライアン・ハリス博士(1985年)

① 経営管理の基本発想
小売業やメーカーにおいて、商品のカテゴリー・グループを戦略遂行単位(Strategic BusinessUnit)と設定し、消費者ニーズの充足と経営における売上高及び利益などの経営目標を達成する為の効果的な考え方。

② 共同計画プロセス
小売業とメーカーが相互の利益を確保することを共通目標として、商品カテゴリーの効率の向上に努力するものである。このために、戦略的な計画手法に従い、客観的なデータを基礎にしながら、これを分析し、必要な諸々の方法を計画し、実行していくこと。

③ 組織開発
商品カテゴリーの総括的な管理責任を持つカテゴリー・マネージャーは、商品カテゴリーの仕入れと販売の計画から実施、そして利益の結果まで担当する。つまり、彼は売り場の商品在庫、売り場スペース、来店客数と活用可能な資産を使って、資産投資効率(ROA)の極大化を追及する機能であり、このために必要な権限と責任を付与する組織の開発が必要である。

2. ウイラード・ビショップ博士(1989年)

小売業とメーカーが、商品のカテゴリーに関する情報をお互いに持ち寄り、これを効果的に統合して、商品カテゴリーの効率を高めるプロセス。
個別のブランドやアイテムの一つ一つに着目するのではなくカテゴリー全体の効率を包括的に追及する考え方であり、このためには、小売業とメーカーが相互に協力し、情報の活用度を高め合うことが重要である。

① カテゴリーマネジメントはメーカーと小売業との共同作業である。
② 小売業の成果の最大化を第一主義とし、その中でメーカーへの利潤追求を実現する。
③ 評価の単位をカテゴリーとする。

第三は、ビジネス上の基本的な発想視点です。

1. 取引関係にあるメーカー、小売業が共通の焦点とすべきものは“変化する消費者”対応である。
2. 取引関係の強化と信頼感の形成は、自らの努力で確保すべきものであって、与えられるものではない。
3. お互いの利益確保を求める交渉が最も良好な結果をもたらす。
4. 情報の共有化は必須条件である。
5. タイムリーであることが、情報の本当の価値を引出す唯一のポイントである。
6. カテゴリー・マネジメントを成功させるために必要な専門技術や情報は、メーカー、卸売業、小売業の誰もがすべてを持ち合わせていることはない。互いが補完関係にある。
7. 取引に関する哲学と管理に関する戦略について、明確な文章で記述することが求められている。
8. 互恵の精神
9. 商品カテゴリーを1つの戦略遂行単位(S.B.U.)として、当該カテゴリーの目標とこの目標を達成する戦略を立案し、管理すことが目的である。
①カテゴリー単位で店頭を構成する
② 〃 損益を計算する
③ 〃 販売促進を考える
④ 〃 スペースを管理する
⑤ 〃 商圏内シェアを管理する
10. カテゴリー・マネージャーの役割は、仕入れ・MD・価格設定・SP在庫管理・ロジスティック・商品開発・棚割り・市場分析・商品マスター管理・欠品管理・計数管理など幅広い。

(2002/06/14)