6. 流通業の会議、ミーティングの実態

1. はじめに
2. 小売企業の特質と会議、ミーティング
3. 小売企業の会議の特徴
4. 小売企業の会議の種類
5. 会議の実態レポート
6. まとめ

1. はじめに

全ての企業には”組織”があります。
組織での意思決定は、大なり小なりの”会議”で行なわれます。
会議は「○○会議」とか「○○ミーティング」とか名称が付けられた正式なものと、毎朝のミーティングの様に、その都度行なわれるものとあります。

ところで、「会議」と「ミーティング」、2つの名称がありますが、内容に違いがあるのでしょうか。
先ずこの事を解説しておきます。

「会議」と言う名称は、参加者、議題、運営方法などが決まっている場合に使われる事が多い様です。
「ミーティング」と言う名称は、必要に応じて、その都度集まって何かを打ち合わせる、相談するという場合に使われている様です。
しかし、当然の事ながら、2つの言葉は本来の意味に違いはありません。(日本語と英語をこの様に使い分ける事は、よくある用法です。)
いずれにせよ、会議、ミーティングを通じて企業経営の全ての事案が決済されていく、これだけはまちがいない事です。
小売企業も同様です。
バイヤーが起案した品揃え、売場改装、販促企画等は会議、ミーティングの場で検討され、修正され、決裁されます。
また、会議やミーティングの場を通じて、バイヤーに対し様々な指示が出されます。
だから、ベンダー・メーカーの営業マンは、相手先企業の会議、ミーティングの実態を把握しておく事が極めて重要なのです。
目の前に居るバイヤーだけを見ていてはダメなのです。
バイヤーの発言、行動だけを追っていたのでは、相手企業の考え、方針が見えてこないのです。
と言う訳で、今回のセミナーは「小売企業の会議、ミーティングの実態」について勉強します。

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2. 小売企業の特質と会議、ミーティング

会議、ミーティングを考える時、小売企業だからといって、他の業界の企業と特別な違いがあるわけではありません。
しかし、小売企業には独自な事情によって、いくつかの注意点があります。先ず、この点を解説しておきます。

① 本部制と店舗

日本の小売企業の多くは「本部制」という組織形態を導入しています。
本部制は、組織の”あり様”と言うより、経営そのものを規定する”しくみ”です。
したがって、小売業の事を論じる場合、「本部制」との関わりを抜きにしては、議論が成り立たないのです。
しかし、「本部制」についての論議は非常に奥が深いので、ここでこれ以上解説するのはやめます。
「本部制」が、会議やミーティングに大きく関係する、と言う事だけ理解して下さい。その理由は次の通りです。
本部制では、原則として全ての事を本部で決めます。
本部で決めた事は、全て店舗に伝える必要があります。
伝え方の優劣で、経営の成否が左右される、と言っても過言ではありません。
ところで、小売企業でよく使われている伝達の手段を整理しておきます。

伝達の手段には、次の5種類があります。

電話
文書(FAX、運送便)
メール
口頭
会議

これら5つの手段を目的に応じて使い分け、す早く、的確な伝達を実施しているのです。
と言う事は、「会議」以外の方法でも伝達はできるのです。
それを、あえて時間とコストをかけて、会議を開催して、伝達を行う理由は何でしょうか。
それは”意識の統一”を重要視するからです。
文書、メール等で予め内容を伝えておき、その上で、念を押すためにエリアマネジャー、スーパーバイザーが店舗を巡回した時、内容を再確認すれば、情報は的確に伝わるのです。
しかし、それだけでは、情報の伝達は実現しても、全社的な意識の統一はできません。
だから、会議が必要なのです。

② 部所毎の役割が不明確

例えば、製造業では、製品を作る製造部門と、出来上がった製品を販売する営業部門、会社全体を運営する管理部門、という具合にそれぞれの役割が明確になっています。
しかし、多くの小売企業では、そうはなっていません。商品部、店舗運営部、販促部等、一応、それらしい名称はついています。
しかし、各部所の役割分担は極めて不明確で、1つの業務が複数の部所にまたがっている例が多いのです。
したがって、何かある事を検討しようとする度に全部所が集って、会議を開かなければならないのです。
もっとも、部所毎の役割が不明確なのは、小売企業の能力不足というだけが理由ではありません。”小売業”というビジネスの特質でもあるのです。

③ 店舗の形態が不揃い

この点は、米国との比較において特に顕著です。
そして、この点が日本の流通理論の”ゆがみ”の原点でもあるのです。しかし、ここでこの問題を追及する事はしません。
店舗の形態が不揃い、という事が会議、ミーティングとどう関連するのか、その事を説明します。
「本部制」によって本部が店舗をコントロールしようとする場合、ある前提が不可欠です。 それは、「標準化」という事です。
店舗が標準化されていなければ、「本部制」は機能しないのです。
ここで言う「標準化」とは、店舗のレイアウト、オペレーションなどあらゆる分野を指します。
しかし、現実には「標準化」はまったく実現していません。
本題からはずれますが、少しだけこの点を説明しておきます。
なぜ標準化ができないのか、その理由は、店舗建物の大きさ、形が不揃いだからです。
どうして、大きさ、形を統一しないのか。しないのではなく、できないのです。

できない理由は、次の3点です。

1. 店舗用地が不揃い
日本は国土が狭い。狭いから、土地が高い。狭くて高いから土地の形状が不定形になる。
米国の様な、広大で、しかも四角形をした店舗用地を探す事は、ほとんど不可能です。

2. 建築基準法、消防法等
店舗を作る場合、様々な法律・規則に拘束されます。しかもそれらの多くが、”窓口行政”で、地方自治体によって解釈、見解が異なるのです。 だから、自分の思い通りに建物や店舗が作れないのです。

3. 店舗作りで”遊ぶ”経営者
全ての企業ではありませんが、小売企業の経営者にはこのタイプが多いのです。
店舗は、経営の”手段”であるべきなのに、自分の夢、自分の”見栄”を実現する場、機会になってしまうのです。
だから、毎回、新店を作る度に、まったく異なったデザイン、形、レイアウトの店を作って遊んでしまうのです。

さて本題に戻ります。

店舗の大きさ、形が標準化されていない現状では、本部が決めたある案件を、その目的に合わせて全店で正確に実現するには、店舗毎に様々な修正を加える必要が生じます。
つまり、本部が作った「指示書」通りにはならない、と言う事です。
本部の指示書を基本形とし、これに各店の事情に合わせた修正を加えて、”○○店版”を作るのです。
この修正は、店舗だけの判断では行なえない場合がほとんどです。
したがって、会議の場で各部所、各担当が話し合って決める事になります。

以上、小売企業の会議のあり方を理解する上で注意しなければならない特質を3項目、解説しました。

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3. 小売企業の会議の特徴

有名な格言があります。

会して議せず
議して決せず
決して行なわず
行いて省みず

小売企業の多くは、この格言通りの会議、ミーティングをくり返しています。
もっとも、小売企業と言っても売上高1兆円を超す様なトップ企業は別です。
しかし、日本にはそんな企業は数社しかありません。ちなみに、このセミナーの対象として意識している小売企業は、売上高1千億位までの中小企業です。
それらの小売企業の会議、ミーティングの特徴を以下にまとめます。

① 社長の独演会

日本の中小の小売企業は、ほぼ100%がオーナー経営者です。
このオーナー経営者にとって、「会議」は自分自身が様々な”役”を演ずるステージでしかないのです。
会議の参加者は「聴衆」です。それも、決して文句を言わず、どんなにヘタな歌でも、芝居でも、拍手喝采まちがいなしの、聴衆、観客です。
独演会で語られる”演題”は共通しています。

1. 自分はいかにして成功したか、という「成功話し」
2. 成功するためには、自分がいかに苦労し、努力したか、という「苦労話し」
3. なのに、最近の若い社員たちはまるでヤル気がない、また、幹部は幹部で責任感が乏しい、帰属心が無い等々の、「愚痴話し」
4. 自分がもっと若かったら、自分が今の立場でなければ、君らにはまかせておかない、という「タラ・レバ話し」

こんな話しが会議の場で、オーナーの口から語られるのです。
これでは本来の会議になるはずもなく、参加者はたまったものではありません。
こんな話を延々と聞かされた後で、「さて本日の議題は……」と議長が声をかけても、会議の参加者が乗ってくるはずはないのです。

② 幹部の飛び入り出演

社長をはじめとする経営幹部がよく行うパフォーマンスです。
会議への出席を打診された当初は、スケジュールが調整つかない、その程度の内容なら私が出席するまでもないだろう、などと出席を承諾しないのです。
しかし、会議当日、開会して30分程経った頃に突然現われるのです。
現われた途端に、会議の内容、途中経過を議長に報告させます。
そして、「こんな会議をやっているからダメなんだ、君達は!」と一喝するのです。
その後は、いつもの独演会。
なんの事はない、出ない、と言っておきながら、突然に現われるのは、自分の印象を強烈に打ち出すための演出でしかないのです。
もっとも、会議に出席しているメンバーもしたたかで、ボツボツ○○営業本部長が現われる頃だな、と心構えはできています。
なにせ、いつもの事ですから。
ヒドイ時は、半日の会議時間中に2人も3人もの幹部が”フラリ”と登場して、それぞれ勝手な事をしゃべって去っていく、そんな時すらあるのです。

③ 会議を仕切れない議長

わが国の国会議長は誰にでもできます。
なぜかと言うと、本会議で話し合われる内容は、国対委員会、議事運営委員会で、事前にほとんど全てが取り決められているからです。
しかし、会社の会議はそうはいきません。したがって、議長の役割が極めて重要になります。
ところが、小売企業の会議では議長が役に立たないのです。
会議を司る(つかさどる)、つまり”仕切る”事ができないのです。
A氏の意見を聞いた後、B氏に意見を求め、その次に、ところでC氏はどう思いますか、という具合です。つまり発言順を調整しているだけの議長なのです。
それぞれの発言内容を総括し、論点を抽出する事、結論に導く事ができないのです。
小中学校のホームルームと同じだ、と私はいつも評しています。
どうして議長ができないのか、無理もないのです。
小売企業に入社してくる学生は、ハッキリ言って3流学生です。
学生時代まともに勉強していないし、ましてやレポートなどほとんど書いていません。
サークルに参加してディベートの能力を身につけた、などという学生は皆無です。
その程度の社員でも、売場担当、売場主任位までなら、”体力と気力”でなんとか対応できます。
むしろ、物事を論理的に考えるタイプより、俗に言う”体育会系”タイプの方が成績を上げる場合が多いのです。
ところが、店長、バイヤーになると事情が変わってきます。体育会系の”ノリ”だけでは通用しなくなります。
それでも、周りのレベルが低いので、体力、気力にホンのちょっと、気配りや交渉力が加われば、それなりの成果を出す事はできるのです。
しかし、1つの部所を任せられ、何人かの部下を束ねる立場の管理職になると、そうはいきません。
管理、統括する能力、つまりそれまでの能力とはまったく異なった分野の能力が求められるのです。
ところが、経営者側がこの事をまったく理解していないため、理解していても事の重大さをわかっていないため、何の対策も打っていないのです。
対策とは教育の事です。
ほとんどの小売企業では、中堅幹部への昇格に際し、何の教育もしていません。
「君も今日から課長だ。今までの経験を十分に活用して、がんばってくれたまえ。何かわからない事があったら、先輩の○○課長に教えてもらいなさい」。これで終わりです。
中堅幹部が”ダメ幹”なのは、したがって、まともな会議もできないのは、”必然”なのです。

④ 議題が無い

小売企業の会議には議題が無い事が多いのです。いや、ある事はあるのですが、それは、とても議題と呼べる内容ではないのです。

・11月度の販売実績について
・1月度の店舗運営について
・来年度の販促について
・従業員のヤル気を向上させる対策について
・費用削減の方法について

一例をあげるとこんな内容です。

この様な抽象的な議題を掲げて、しかも、能力の無い議長のもとで行なわれる会議がどうなるか、誰にも容易に想像できる結果です。
小売企業でも、定例会議のスケジュールは事前に決まっています。
しかし、肝心の議題がなかなか決まらないのです。
「○月度営業会議」を○月○○日に行う、と決っていても、その内容が直前まで決まらず、参加者に伝えられないのです。
ヒドイ時は、営業に関する全般的な内容を話しあう、とか、売上不振を解決するための対策について検討する、とか、こんな程度の議題だけで、当日を迎える事もあるのです。
さらにヒドイ時は、議題が決まらないので会議の日程を先送りする、などと言うとんでもない事態も起きているのです。
「会議を見ればその会社の全てが分かる」と言われます。
まったくその通りで、会議にはその会社の全てが現われます。

・その会社の社風
・経営トップの考え、性格
・幹部の能力
・組織運営のあり様
・従業員のモラル
・人間関係
・一人一人のポジション 等々

ベンダー・メーカーの営業マンの立場では、相手先企業の会議に出席できる機会はめったにありません。
しかし、万一、参加できる機会があったら絶対に逃さず、相手先企業の全てを読み取ってくるべきです。
後々の営業活動に大変役に立つはずです。
ところで、どうして議題を決められないのか、その事を解説しておきます。
一般に小売企業は、いわゆる”ドンブリ勘定”が多いのです。
売れた時は、ヤッタヤッタで終わり。
売れない時は、売れ!ガンバレ!と煽るだけ。
程度の差こそあれ、物事を論理的に考える、行動するという習慣がほとんど無いのです。
普段が普段ですから、いざ議題を考える、と言っても、先ほどの例の様な総論的な事しか、頭に浮かばないのです。

⑤ 出席者は全員が”他責”

物事を”他責”にして片つけてしまう、というのは小売企業に限らず、日本企業の特質と言えます。
企業だけでなく、政・官はさらに他責がヒドイのですが、その問題はここでは触れません。そんな日本社会の中でも、小売企業は特に”他責”が目立ちます。
小売企業で他責が目立つ理由は、第2章で解説した、「小売企業の特質」に起因します。
他責が骨のズイまで染み込んでいる人達の会議はどうなるのか。
上から下まで、全ての発言が次の様な具合になります。

・店舗運営部長 ;練馬店はオープン後4年半を経過しています。昨年までは順調に伸びて来たが、今年に入ってから昨対を割る月が出ています。来夏にはA社が2㎞の位置に出店する事だし、来春に全店改装を行うべきではないでしょうか。
・営業本部長 ;商品部側の意見は?
・商品本部長 ;たしかにそう思います。しかし昨年割れと言っても98%~100%で推移している事だし、商品部側としては現状の品揃えで特に問題ないと考えているのですが。
もちろん、店舗運営部側が改装すると言うのであればそれなりに準備しますが。
・営業本部長 ;担当のエリア課長、大泉君の考えはどうなの?
・大泉課長 ;そうですね、やはり今年に入ってから客数の伸びがほとんどありません。このままでは、来年A社が出店した場合、昨対を維持するのは難しいと思います。
しかし、今のままで戦えないのか、と言われればダメだと言う事でもなく、費用対効果を考えれば、全店改装はしないで店側の努力で乗り切る、というのも1つの選択肢かと思うのですが、しかし、そうは言っても、現状の品揃えには問題が無い訳ではなく、現に店のパートさん達からも様々な意見が出ておりまして、その辺の事も十分に検討するべきだと考えるのですが……
・営業本部長 ;それぞれ意見はあるようだが、要は、いかなる理由があってもA社の出店に対し当社が売上を落とす様な事があってはならない、という事だ。
私は日頃より幹部たるものは常に先を見て行動しろ、戦略が大事だ、と言っている。
練馬店の改装問題も戦略が大事だ。やるやらない、という事よりも今後の戦略だよ、大切なのは。
ところで、この問題はいかがいたしましょうか、社長。
・社長 ;各自考えがあるだろうから、皆でよく検討する事が必要だ。 もっとコミュニケーションを密にしないといけないな、我が社は。

こんな会議を延々と行っているのです。
実際の会議はもっとヒドイ場合が多いのです。

⑥ 議事録すらない会議

この問題も小売企業に限った事ではなく、どこの企業でも事情は同じでしょう。
しかし、再三指摘している通り、小売企業は部所毎の役割分担が非常に曖昧です。
仮に会議で何かが決ったとします。
しかし、その時点では、全ての部所の全てのスタッフが、自分がその案件を担当する、とは夢にも思っていないのです。
その案件をどこの部所が、いつまでに、どの様に遂行するのか、という事は会議後に改めて話し合って、そこで初めて決まるのです。
こんな状況で、万一、会議の議事録がなかったらどうなるのでしょう。
会議である案件を話し合った、というただそれだけで、それらの案件が決裁されたと錯覚し、しかも、誰かがどこかでその案件を、実施してくれていて、すでに完了している、と思い込んでしまうのです。
ベンダー・メーカーの営業マン諸氏もこの様な経験があると思います。
バイヤーから「先月の会議でこう決まったよ」と聞かされ、その案件に対する準備を整えてバイヤーからの指示を待っている。
しかし、いつまでたっても指示が出ない。
そこで、バイヤーにその件について尋ねると、「アー、あの件ネ。あれは、私が担当じゃないよ。誰がやってるんだろう……」という具合。
会議は”目的”ではなく”手段”であり、途中経過でしかないのに、会議が終わった途端に、会議の内容が全て”過去完了形”になってしまう。
こんな企業は、会議のあり方に大きな問題があるのですが、会議後の行動にも問題があります。
議事録を作成し、参加者全員に回覧し、それぞれが議事録の内容にコメントした上で、自分の任務を再確認する。
そんな”しつけ”レベルの事ができていない企業が小売業には多いのです。

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4. 小売企業の会議の種類

この章では、小売企業の会議、ミーティングを体系的に整理します。 ただし、会議の名称、内容は各企業によって異なります。 ここでは、一般的な事例を解説します。

① 定例の会議、ミーティング

1)朝礼
朝礼には、3種類あります。

・日次朝礼
・週次朝礼
・月次朝礼

日次朝礼は、どこの企業でも必ず行なわれる、というものではありません。
1つの企業内でも、所属長の考えによって、やる課とやらない課がある、という場合もあります。
また、週次朝礼は本部全体で行うが、日次朝礼は各部所の考えに任せている、という場合もあります。
月次朝礼は、実施している企業が多い様です。いずれの朝礼でも、必ず実績発表があります。
又、「社是」「経営理念」の唱和、接客用語の唱和を行っている企業も多い様です。 しかし、これらの唱和は、経営トップの自己満足以上の意味はまったくありません。

2)課ミーティング
各課単位で行うミーティングです。
朝礼と同じ様に、日次、週次、月次で行います。
商品部の場合、月曜以外は各バイヤーの行動がバラバラになる事が多いので、日次ミーティングは実施していない企業が多い様です。
課ミーティングの運営は、各課長に任せられている場合が多い様です。

② 営業部の会議

営業部の会議、とは、商品部、店舗運営部が合同で行う会議の事です。

1)営業部課長会議
営業本部長の主催する会議です。
この会議で、営業本部のほとんどの案件が決裁され、後日、役員会で承認された上で実施されます。
この会議は、原則として毎週実施する企業が多い様です。

2)営業部全体会議
本部の部課長に、エリアマネジャー、店長まで加えた、営業部の全体会議です。
年に数回実施されます。半期に1度、四半期に1度、という企業が多いと思います。
この会議は、何かの案件を議論する、というよりは、営業部課長会議で決裁した案件を、現場のマネジャー、店長に伝えるという事が主たる目的です。
内容を伝えるだけなら、メールや文書でもよいのですが、全員が一堂に参集し、”フェイスtoフェイス”で内容を確認する、と言う事に意義があります。

③ 商品部の会議

1)商品部課長会議
商品本部長が主催し、商品部の管理職全員が参加します。
営業本部長が出席したり、社長が顔を出す事もあります。
この会議では、商品部の業務スケジュール、実績分析と予測、プロモMD・チラシMDの確認、ベンダー・メーカーとの取引き内容確認、など商品部の運営に関する全ての事が検討されます。
しかし、いずれも具体的な検討は別途行い、この会議では確認が中心です。

2)商品部全体会議
商品本部長が主催し、商品部の全員が参加します。
商品部課長会議で決まった事が全員に伝えられます。バイヤーにとって最も重要な会議になります。
この会議には、社長、営業本部長も参加する企業が多い様です。
この会議はトップの方針を直接バイヤーに聞かせる、という場でもあるのです。
トップ(社長、営業本部長)の方針を受け、商品本部長から、MD政策や、取引先政策、数値計画などが具体的に示されます。

3)商品部課毎ミィーティング
商品部課長会議、商品部全体会議、の内容を受け、各課毎に実施します。 課長が主催し、バイヤーが参加します。
バイヤーの実務に関しては、このミィーティングで検討され、その後商品本部長、営業本部長の決裁を受けて、決定されます。
又、このミィーティングは、課長からバイヤーへのOJT教育の場でもあります。

4)商品政策会議
不定期で行なわれる事が多い会議です。
その企業のMD政策(商品政策)を決める非常に重要な会議です。
MD政策を決める、とは言っても、毎回、毎回戦略を話し合う訳ではありません。
通常は、年度毎に、その年の商品政策が決められ、何年かに一度、基本商品政策が改訂されます。
したがって、商品政策会議では、当年度の商品政策の確認と、その政策にのっとった部門毎のMD内容が検討されます。
会議には、営業本部長以下、営業部幹部全員とバイヤーが参加します。
企業によって会議の内容は異なりますが、一般には、次の様な内容になります。

・マーケット分析
各課長及び部長が発表し、参加者が討議します。
・自社フォーマットの検討
マーケット動向の分析を踏まえ、自社の現状フォーマットで問題ないのか検討します。
・各部門毎の検討
全部門を毎回検討する事は、時間の関係でできないので、1回に2~3部門を検討します。
バイヤー及び担当課長が、自部門の現状を分析し今後の方向性、改善計画を発表します。

5)プロモMD会議
各バイヤーが立案したプロモMD計画を、商品部全体で検討し、各部門間の調整をした上で決定する会議です。
商品部全体の会議の前に、各課では、課長を中心に事前の検討と調整を済ませておきます。 この会議の内容を、後日、営業部全体のプロモMD会議に諮ります。

6)商品部チラシ会議
販促部が主催する「チラシ企画会議」で決定された企画内容を商品部内で再度確認し、各部門のチラシMDを決定する会議です。
複数部門が関係するMDテーマでは、部門間のアイテム数を調整し、商品関連を確認します。

④店舗運営部の会議

店舗運営部の会議には、本部だけの会議と、エリアマネジャーまで加えた会議、店長まで加えた会議の3段階があります。

1)店舗運営部課長会議
店舗運営部はエリアマネジャー(課長)が中心になって動いています。 したがって、本部に常駐している部長と課長だけ参加した会議では、意味がありません。店舗運営部の部課長会議は、原則として必ずエリアマネジャーが参加します。 この会議は、2つの役割を持っています。

1. 各店舗の状況を報告する
店舗運営部にとって、最も重要な事は店舗の状況を的確に把握する事です。
本部に居て、数値だけ見ていたのでは、店舗の事はほとんどわかりません。
しかし、本部の幹部がいつも店舗を視察して廻る事は不可能です。
そこで、エリアマネジャーが自分の目と耳で確認した各店の状況を、この会議で報告するのです。
発表を聞いている他のエリアマネジャーは、他エリアの状況と自分のエリアを比較する事で、問題の発見や改善策の立案の参考にします。

2. 本部からの指示、指導
役員会での決定事項をはじめ、本部で決裁された案件、方針はこの会議でエリアマネジャーに伝えられ、後日エリアマネジャーを通じて店舗に伝えられます。
本部長をはじめとする本部員側の話す能力、エリアマネジャー側の聞き取る能力が、会議の成否を左右します

3. 関連各部所からの連絡
営業部以外の各部所からの連絡事項も、この会議でエリアマネジャーに伝えられます。
事前に文書が作られていて、その文書を見ながら説明を聞く、というスタイルが一般的です。
又、各部所がこの会議を通じて現場(店舗)の意見、状況を聞き取る、把握する、という事もあります。 

2)店長会議
小売企業にとって最も重要な会議です。
全店舗の店長及び本部の幹部全員が参加します。
内容は企業によって異なりますが、本来の店長会議の目的は次の通りです。

1. 店長と本部との意識、方針の統一
本部と店舗とは距離(物理的、及び心理的)があります。
この”距離”が本部と店舗の間に微少な”ズレ”を生じさせます。
そのズレを放っておくと大変な事になります。
だから定期的に店長会議を開き、意識、方針を再確認するのです。

2. 店長の意識、技術の向上
これは、特別に時間をさいて何かを行う、と言う訳ではありません。
しかし、一日同じ会議室に居ると、それだけで他の店長の事を意識し、わずかな会話だけでも非常に多くの影響を受けるのです。
もっとも、休憩中に、タバコを吸いながら、昨日のテレビの話しをしている様な店長たちでは、この効果はまったく期待できません。

3. 店長と間近かに接する
本部の幹部は、店長と接する機会が少ないのです。
本来は、幹部自らが頻繁に店舗を廻るべきなのですが、そうすると本部業務が停滞する事になります。
店舗運営部や商品部を除くと、他の部所の幹部が店舗を訪ねるのは、2~3ヶ月に1度位です。
店長会議に参加すれば、全店長と接する事ができます。

店長会議の目的を3項目、説明しました。

店長会議では、店長一人一人が自店の業績を発表したり、指名された店長がある案件に対する意見を発表したりする事もあります。
しかしその発表は、店長の発表内容、店長の意見を聞く事が目的ではありません。上記1~3の目的を達成するための手段として行なわれるのです。
第一、 何十人もの店長全員にそんな報告をさせていたら、それだけで一日が終わってしまいます。
もっとも、全店長に先月の実績数値の報告をさせている様な企業もあります。
そんな企業は、店長会議そのものを廃止した方が良いのです。
ダメな店長会議の例をもう一つ紹介します。
店長会議当日に「資料」を配布する場合です。店長は、会議の場で初めてその資料を見る訳です。
これでは、その案件に対して何の意見も出ないし、店舗従業員の意見を代表する事など不可能です。

3)エリア店長会議
エリア内の全店長がある店舗に集まって行います。
会議と言うよりも店長間の意見交換の場、と言えるものです。
この会議を有効に活用すると、店長相互の連帯感、ひいては、企業への帰属意識が高まります。
又、この会議では、店長に必要な様々な実務技術の習得、技術向上のために、教育、研修を実施する場合もあります。
「会議」と正式に位置づけられていなくても、優秀なエリアマネジャーは、この集まりを積極的に行い、自分のエリアの店長の能力向上を図ります。

⑤ 販促部の会議

1)チラシ企画会議
この会議の事は、前回のセミナー(第5回「バイヤーのマーケティング、販促業務を知る」)で解説してあります。
第5回分を再読すると、よく理解できるはずです。
チラシ企画会議は、2種類あります。

・長期的なチラシ内容の検討会議
・チラシ1本毎の詳細内容の検討会議

いずれも販促部が主催し、商品部、店舗運営部が参加します。
この会議の内容は、企画内容を検討するための”タタキ台”がどこまで具体化されて、準備されているかによって大きく異なります。
販促部に能力があり、タタキ台となる企画を具体的に提案できれば、会議は1回で終わり、しかも十分な成果を上げる事ができます。
しかし、販促部に能力がなく、企画の”方向”だけしか提案できない企業では、この会議で企画の内容を、初めから1つ1つ全て検討する事となり、非常に時間がかかるのです。
場合によっては1回の会議ではまとめきれず、2度も3度も同じ会議を行う事になります。

⑥ その他の会議

以上、説明した会議は、バイヤーに直接関係する会議でした。
この他に、バイヤーにはあまり関わりの無い会議があります。 会議の種類だけあげておきます。

1. 役員会
2. 管理部門会議
3. 開発部会議
4. 人事部会議

以上、①~⑥まで、小売企業の会議の種類を解説しました。
この他に、数人が集まって行なわれるミーティングや、その都度招集されるプロジェクト会議など、まだまだたくさん会議があります。
ベンダー・メーカーの営業マンは、先ず第一に、相手先企業でどの様な会議が開催されているのか、種類と名称を確認する事が大切です。

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5. 会議の実態レポート

この章では、小売企業の代表的な会議を2つ取り上げ”最大公約数的”なモデルを想定し、実態レポート的に解説します。

商品部全体会議

○月○日、月曜日、午前9時30分、本社大会議室で、月曜日定例の商品部全体会議が始まる。
今日の議長は商品2部の原部長。
今日は、古田営業本部長が参加しているが、社長の姿はない。
原部長があいさつする。
先週の実績が悪かった事、年末商戦に向けて本部の取り組みが遅くれている事などを指摘。 今日の議題が確認される。

● 今日の議題は、次の通りだ。

1. 先週の実績分析報告 ―― 各部長、及び各課長及び指名バイヤー
2. 1月度プロモMD全体計画 ―― 各課長
3. 1月度チラシMD全体計画 ―― 販促部長及び各部長
4. 店舗レポート ―― 指名バイヤー
5. 商談レポート ―― 指名バイヤー
6. MD計画 ―― 指名バイヤー
7. MD研修 ―― 販促部長
8. 諸注意

議題は、前週の金曜日まで社内メールで通知される。
この会議は、ルーチン業務の確認が目的なので、議題は毎週ほぼ同じである。
ただし、店舗改装などがあると、その件が議題に取り上げられる事がある。

● 古田営業本部長あいさつ

本部長はいきなり、商品1部の清原バイヤーを指名し、最近のマーケット動向についてレポートせよ、と命じた。
清原バイヤーは立ち上がったものの、まともな報告ができないで困っている。
「着席せよ」と指示される。
その後本部長から、商品部はマーケットの変化に対応していない。マーケットに対応しないMDはMDではない。
ベンダー・メーカーとの商談ばかりしているから、マーケット分析がおろそかになる、と言う注意がある。
前任の長島本部長は感覚的な訓示ばかりで、我々バイヤーには何の話しかほとんどわからなかった。しかし、ただ聞くふりをしていればよかったので楽だった。
現在の古田本部長は、この会議で必ずバイヤーを指名して、あるテーマについて報告をさせる。ほとんどのバイヤーは、まともに回答できない。
そこで、本部長は、バイヤーの能力不足を注意した上で、そのテーマについて指導する。 だから会議は、いつも始まりから緊張する。

● 先週の実績分析報告

商品1部、2部、3部の各部長が各部の状況を報告する。
前週の「実績表」は、月曜日の朝7時までにプリントされている。
会議では、この「実績表」にもとづいて、各部長がコメントを発表する。
1部長からは、狂牛病問題の状況が報告される。
狂牛病問題が発生してから、毎週、この問題が取り上げられている。
今日の報告では、牛肉の落ち込み分を豚、トリではカバーでききれない状況、ミート部門全体でも買上点数が6%も低下している状況、が報告された。
古田営業本部長からは、すかさず、魚部門、青果部門の数値についての質問が飛ぶ。
会議場は緊張した雰囲気に包まれる。
2部長、3部長の報告が終ったのは、10時過ぎだった。

● 各課長の報告

各部長の総括報告の後は、全課長が一人ずつ報告する。
この課長報告がもっとも厳しい。
発表は、成績順に行なわれる。
成績は、当月の累計と、当年度の初めからの累計と、2つの実績で評価される。
どちらの実績で発表順が決められるかは、その日によって異なる。営業本部長が指示する。
課長は全員、前の席に並ぶ。
参加者と対面する形で横一列に、成績順に並ぶのだ。
ワースト1の課長から報告させられる。
当然ながら、数値そのものの発表は不要だ。もちろん言い訳や、お詫びは通用しない。
いかにして落ち込み分を回復させるか、と言う今後の対策についての発表のみだ。
しかし、単純な”ガンバリマス”的な発表では、即座に叱責が飛ぶ。
原因分析にもとづいた、緻密な行為計画が求められる。
分析に甘さがあったり、具体性に欠ける行為計画だったりすると、すぐに商品本部長、営業本部長から追及される。
今日の第一発表者は、3部の中田課長だ。
同課長は先週もトップバッターだった。先週の発表に対し、分析が甘い、そんな対策でホントに業績回復が図れるのか、と非常に厳しい追及があった。
だから、今日はしっかりと準備をしてきたのだろうが、今日もOKは出なかった。
部下のバイヤーに対する指示の出し方が手ぬるい、と責められた。結局、発表10分、追及20分と計30分が費やされた。
以降、成績順位が上がるにしたがって、課長の発表も短時間となり、商品本部長、営業本部長からの追及もほとんどなくなる。

● 休憩

課長報告が終わったところで、休憩が入る。
先週以上に厳しくやられた中田課長は、顔色が悪い。
一方、3週連続でNo.1の大畑課長は、営業本部長と談笑している。ビジネスマンは成績が全て。
バイヤーたちは、と言うと次のバイヤー報告で自分が指名されはしないか、と緊張している。

● バイヤー報告

会議が再開される。
商品本部長から、一人目のバイヤーが指名される。ベビー用品部門の中井バイヤーだ。
立ち上がって移動し、前の発表席に着き、あいさつして発表を始める。
売上、粗利、客数、支持率、客単価、点数、点単価、と定例の手順で報告していく。
ここまでは、順調だったが、在庫日数のところで、営業本部長から叱責が飛んだ。
チャイルドシート、バギーの品揃えを強化したため、在庫が膨らんでいる、と報告した点を追及されたのだ。
品揃えを強化したから在庫が膨らんでもやむを得ない、というその考えがダメだ。ビジネスは常に”二律背反”の命題を同時にクリアーするのだ!と厳しい。
もっとも、この事は営業本部長の口グセ。それがわかっていながら、言い訳をした中田バイヤーが問題だ。
中田バイヤーの後で、清水バイヤーが指名される。今日はこの2名でバイヤー報告が終了した。

● 1月度プロモMD全体計画

この報告は、全課長が行う。
既に、「プロモMD計画書」が作成され、提出されているので、確認のための報告。
別途、「プロモ企画会議」があるので、この「商品部全体会議」の場で、この議題に時間を費やす事はほとんどない。

● 1月度チラシMD全体計画

先ず、販促部長が報告する。

・チラシスケジュール
・作業スケジュール
・チラシ毎のMD方針

これも、事前に「1月度チラシ計画書」が提出されているので、参加者は事前に内容を確認している。
しかし、チラシについては、スンナリとは終らない。必ず何らかの異論、疑問が提示され、それについて検討される事が多い。
特に日程、サイズが再検討される事が多い。
今日は、1月第4週チラシのサイズについて、何人かの課長から異論が出された。計画ではB3サイズになっていたのだ。
営業本部長から、再検討の指示が出た。
本来なら、販促部長の報告の後、各商品部長から、チラシMDの内容が発表されるのだが、時間が無いという理由で中止となった。
いつもの事だが、チラシMDは、そのチラシ直前にならないと、本気になって検討されない。

● 店舗レポート

当社では、バイヤーは毎週必ず店舗巡回する様、指示されている。その内容をこの会議で報告するのだ。
「店舗巡回報告書」のコピーを幹部に提出した上で、発表する。
したがって、バイヤーは、日曜日の夜までに、又は月曜日の朝早く出社して、報告書をまとめておかなければならない。
今日は、日配部門の大橋バイヤーが指名された。
彼は先週、北部エリアを廻ったという。
報告によれば、彼は売場担当パートさんとのミィーティングを実施したと言う。
事前にミーティングのテーマを決め、そのテーマについての自分の考えをまとめ、それを文書にして、店舗に送った。
その文書を担当パートさんに読んでおいてもらい、巡回当日は、自分の考えに対するパートさんのコメントを聞いたそうだ。
この報告は、営業本部長に評価された。
営業本部長から、この方法を全バイヤーが採用する様に、と指示があり、すぐに内容の検討に入った。
このため、今日の店舗レポートは1人で終了。

● 商談レポート

前週の商談について、指名されたバイヤーが報告する。
商談日は火曜日だ。商談翌日までに「商談報告書」を提出する事になっている。
この「商談報告書」に目を通すのは、バイヤーの上司である課長、部長、商品本部長だ。
発表バイヤーの指名は商品本部長が行う。
今日は、日用品の福本バイヤーが指名された。
彼は、11月から実施している「入浴剤フェア」について、先週の商談で中間分析を行った、と報告した。
発表の後、商品本部長から、分析方法について指摘された。
ベンダー・メーカー側のデータに欠陥がある事、その事に気付かないまま分析を行った事、この2点を追及されたのだ。
この様に、商談レポートの発表では、各バイヤーの商談の実態が全て裸にされるので、バイヤーには非常に厳しい場面となる。
とは言うものの、商談の実状に則した指導を受けられるため、勉強になる。
また、他のバイヤーの商談方法がわかるので、参考になる。
しかし、発表させられる時は、冷や汗が出る。

● MD計画

当社ではMD計画とは、定番の新商品導入、商品マッサージ、スロット改装の事をさす。
バイヤーは、年度始めに52週のMD計画書を作成し、その計画にもとづいてMDを実施している。
その状況を、指名されたバイヤーが報告するのだ。
今日は広川バイヤーが指名された。
彼は現在、「パスタ」のマッサージ計画を策定中。その内容を報告した。
商品本部長から、パスタソースの品揃えがまだまだ不十分、と指摘された。

● MD研修

MD研修は、毎回の会議で、商品本部長が講師となって行っている。 バイヤーにとって必要な基礎知識、理論の習得が目的だ。
しかし今日は、最近食品スーパーで話題になっているCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)について、販促部長が講師役を努めて、勉強する。

この様にして、今日の会議が終了したのは、午後1時45分だった。
商品部全体会議は、いつも昼食休憩は採らないで、通して行なわれる。

チラシ企画会議

○月○日、月曜日、午後5時30分、開始。
チラシ企画会議は、月次会議と週次会議がある。本日は、月次会議だ。
月次会議は、月に一回、来月分のチラシ企画を検討する会議。
販促部から部長、課長、商品部から、本部長、各部長、全課長、全バイヤー、店舗運営部から本部長、各部長、エリア課長までが出席する。営業本部長も時間の都合がつく時は出席する。

● 販促部長 ;今日の会議では1月の第2弾、第3弾のチラシの内容について話し合っていただきます。
加えて2月のチラシについて、当初計画では2本であったものを、売上対策チラシ1本を追加したい、という要望が店舗運営部からありましたので、この件も合わせて検討していただきます。
(1月10日号の検討)

● 販促課長 ;1月10日号は、当初計画ではA面を”冬物処分セール”、B面で”冬の生活便利用品&健康増進用品特集”、という事でした。
昨年度も同じ企画でした。
実績から言うと、A面は○、B面は△、という評価でした。
販促部が先週に行った店長へのインタビューでは、B面の企画はこの時期としては無理があるのではないか、という意見が大半でした。
商品部の意見はいかがでしょうか。

● 商品3部長 ;実績から言うと、あまり良くないです。確か、昨年も反対意見がありました。しかし、他に良い企画がない、という事で実施した経緯があります。
正月開けのこの時期は、実を言うとどんな企画を打っても成功しにくい、というのが過去の経験です。
本年度計画を立てる時も、商品部では色々な企画を検討したのですが代案が無く、結局この企画に落ち着いた、というのが本音です。

● 小野バイヤー(家庭用品担当) ;私としてもこの企画には自信はありません。皆さんの意見の結果、やる方向になればやりますし、難しいという事であれば中止していただいても結構です。
中村バイヤーはいかがでしょうか。

● 中村バイヤー(HBC担当) ;実績から言うと昨年の企画は全くヒットしていません。
それに大型健康機器を導入したため、それらの商品が売れ残り、後々、処分するのに大変な思いをしたのが実態です。
私とすれば、できればやりたくない企画ですが…。

● 販促課長 ;店舗運営部の意見はいかがでしょうか。

● 店舗運営部長 ;店長たちの意見はどうなんだ。

● 店舗運営6課長 ;私のエリアでは、昨年のチラシ結果報告を見ると、8人中7人が企画に無理がある、との意見でした。
先週、店舗巡回の折りに、今年はどうするか意見を聞いたところ、全員があまりやりたくない、と言う事でした。
店長たちは、この時期はディスカウント型のチラシにしたい、と考えています。
デパート、GMSが処分チラシ一色なので、昨年のようなチラシでは戦いにくい、という意見です。

● 店舗運営部3課長 ;私の考えも同じです。
この時期は冬物処分と均一セールのようなバーゲンチラシで行くべきだと思います。

● 販促課長 ;それでは、1月10日号の”冬の生活便利用品&健康増進用品特集”企画は中止と言う事でよろしいですか。

● 店舗運営部長 ;ちょっと待ちなさい。言っている事は分かるが、今年に入ってからチラシの粗利率が2~3ポイント下がっている。
12月の年末チラシも現状の計画では16%~18%の粗利しか取れない。
この状況で、1月のチラシをディスカウント一色にした場合、更なる粗利の低下が予想される。
1月のチラシで、無理をしてディスカウントする必要は無いのではないか。

● 商品本部長 ;それはその通りだと思います。商品部としても粗利の問題は深刻で、今年度計画の25.6を達成するためには、これ以上のディスカウントチラシはやりたくないのが本音です。
10月末より定番商品の仕入れ原価の引下げ交渉を実施していますが、なかなか思うような成果が出ていないのが実状です。
EDLPの拡大も行っていますが、即効性に乏しく、粗利改善には結びついていません。 したがって、私としては1月の第2弾、1月10日号を、両面ともにディスカウントチラシにする事はあまり賛成したくないのですが…
しかし店長側から、従来の企画では売上が取れない、という意見が出されている事もよくわかっています。
しかし、売上をやや落しても、粗利確保を優先するべきだ、という考えもあるのですが…

● 営業本部長 ;さっきから聞いていると、販促部も、店舗運営部も、商品部も、皆が無責任な発言ばかりで、一体誰が結論を出すのだ。
この会議は結論を出す会議であって、いたずらに感想を述べ合ったところで何の意味もない。
こう言うのを”小田原評定”というのだ。
商品本部長に聞くが、今年度の「商品政策方針書」に述べられている、需要創造型MDの確立、という話しは一体どうなったのだ。

*      *      *      *      *

このようにして「チラシ企画会議」は結論が出ないまま、延々と続くのです。
他の会議と同様に、各部所間の本音と建前が錯綜し、誰も結論を下さない、下せないのが実状です。

*      *      *      *      *

● 販促課長 ;ところで1月10日号は当初計画では4色―2色ですがこのままでよろしいでしょうか。 (一同無言…)  販促部長、どうしましょうか。

● 販促部長 ;私は4色―2色で良いと思うのだが

● 販促課長 ;店舗運営部はどうでしょうか

● 店舗運営部長 ;仮にディスカウントチラシであれば2色―2色でもいいのだが、8月の上期決算チラシで2色―2色にした時、売上が悪かったので、その点が気になるが………。
4色と2色では費用はどのくらい違うのか?

● 販促課長 ;全店合計で約50万、違います。

● 店舗運営部長 ;4色にした場合、どれくらい売上が上がるの?

● 販促部長 ;そのようなデータはありません。4色の時と、2色の時の売上を単純に比べる事は何の意味もありません。
全く同じ内容のチラシを、4色と2色で同時に打たない限り、本当の意味での比較ができないからです。
もちろん、そんな事はできるはずもないですから、ハッキリとした事は言えません。 色数の比較は、感覚的に言うしかないのです。
(一同再び無言…)

● 販促課長 ;それでは当初計画どおり4色―2色でいきます。よろしいですね。
(一同頷く)

*      *      *      *      *

● 販促課長 ;1月31日号の「新入学準備特集」の件ですが、学習机の取り扱いはどうなるのでしょうか。

● 田中バイヤー ;今年度は合計24アイテム展開で考えています。チラシにはそのうち8~10アイテムを掲載したいと考えています。

● 販促課長 ;昨年も同じような掲載アイテムでした。昨年のチラシ結果報告を見ると小型店舗の意見として、売場展開アイテムが5アイテムしかなかったのに、非取り扱いアイテムがチラシに掲載され、注文販売扱いとなり、店頭での対応が混乱した、と書かれています。
今年も同じような展開を考えているのであれば、店頭での対応を事前につめておく必要があるのではないでしょうか。

● 店舗運営部5課長 ;販売実績から見ると、小型店での学習デスクの販売は無理だと考えます。
川上店では昨年28台の実績です。ただし、展示見本品6台を、最終処分時30%~50%引きで販売しており、この分を勘案すると、粗利率は7%位しかありません。
売場スペースとの関係を考えると、小型店では学習デスクの販売は止めたいと考えています。
したがって、チラシでは、学習デスクは差替えでやっていただきたい。

● 田中バイヤー ;確かにそういう問題もあると思いますが。しかし、1月、2月、3月の売上計画に占める学習デスクの割合は非常に大きく、これをいきなりやめるとなると、売上目標達成は困難です。
代わりの商品と言っても、これだけの金額を稼げるものはすぐには思い当たりません。
もし学習デスクの取り扱いを中止するのであれば、売上計画そのものを変更していただかないと…

*      *      *      *      *

このようにチラシ企画会議では各部所の思惑が食い違い、なかなか結論が出ない場合が多いのです。
決断を下すのはトップの役目なのですが、そのトップもまた、結論を保留してしまう事が多いのです。
その結果、チラシの内容はいつも、”例年通り”という事でなんとなく落ち着いてしまうのです。

以上、2つの会議を実態レポート風にまとめました。

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6. まとめ

今月は、小売企業の会議、ミーティングについて解説しました。
会議、ミーティングの内容を文章で解説するのは大変難しい、と言う事が私自身よくわかりました。
したがって、皆さんには物足りないセミナーになってしまった事をお詫びいたします。 今回のセミナーを契機に、皆さん自身で、相手先企業の、会議、ミーティングの実態を把握してみて下さい。
それでは、来月のセミナーをお楽しみに。

寒くなっています。
年末を迎え、多忙な毎日が続いている事と思います。くれぐれも健康で、事故のない様、業務に励まれる事をお祈りしております。

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