2. 「バイヤーの仕事」の全体を知る

はじめに
1. バイヤーの仕事は決まっていない
2. 利益を上げるのがバイヤーの仕事
3. 職務内容で整理する
4. 組織上で整理すること
5. 時系列で整理すること
6. 商談は目的ではなく手段
7. 店舗に関わる仕事
8. バイヤーのスケジュール管理
まとめ

はじめに

セミナー第2回目は、”バイヤーの仕事を知る事”がテーマだ。
日頃付き合っている小売業の「バイヤー」についてメーカー、ベンダーの営業マンは、どれだけ知っているだろうか。
ところで「バイヤー」について知る、とは言うものの、いったい何を知るのか、それが問題だ。知るべき事は2つある。

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1. バイヤーの仕事は決まっていない

メーカー、ベンダー側の人々はバイヤーという職種をどう見ているのだろうか。自分達との商談の窓口になる人、つまり、商品担当であり、仕入れ担当、という見方をしている営業マンが多いと思う。

「バイヤー」=バイイング(買付け)+イヤー(する人)という名前からすれば、たしかにその通りだが、実際のところはどうなっているのだろうか。
バイヤーが商品担当である事は間違いない。しかし、それだけの答えでは正解にはならない。バイヤーにとって、商品担当は仕事の一部であって、全てではない。

では、バイヤーの仕事の”全て”を説明して下さい。こう言われると、実はこれが大変難しい。ほとんど困難とも言える程に難しい事なのだ。
バイヤーの仕事。いったいどこからどこまでがバイヤーの仕事なのか、決まっていない、決められない、というのが実情だ。なぜ決められないのか。その理由は2つある。

①.業態によって、バイヤーの仕事内容が異なる。
②.企業によって、バイヤーの仕事内容が異なる。

では、ある業態のある企業と特定した場合、その企業ではバイヤーの仕事は明確になっているのか、と言うと必ずしもそうではない。大半の企業はなんとなくわかっていても、”成文化”されている訳ではなく、ましてや「バイヤーの仕事の・・全て」となると、商品部長ですらよくわからない、というのが実態だ。

小売業の職種のうちバイヤーと並ぶ代表的な職種が「店長」だ。この店長の職務もよくわからないのだが、それでも店長の場合には、 “店に関わる全ての仕事” “現場(店)の全責任者”という事だけはハッキリしている。

しかし、バイヤーの場合、「商品に関わる全ての業務」ではあまりに曖昧で、結局のところよくわからない。したがって、一般には、「商品に関わる業務」を中心にして、関連する様々な業務を担当する、という具合にごまかしている。
そのごまかし、曖昧さが、後々になって商品政策をあやふやにさせ、ひいてはバイヤー業務全体の混乱と、不徹底を招いているのだ。

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2. 利益を上げるのがバイヤーの仕事

利益を上げるのは、決してバイヤーだけの仕事ではない。小売業に関わる全ての業務は、最終的には利益に結びつかなければいけない。もっとも民間企業の場合、企業活動自体が最終的に利益に結びつく、つまり「営利」でなければならない。

小売業の場合、最終目的である”利益”を上げる事への関わり方は、職種によって異なる(図①)。しかし、職種毎に明確に区分けされている訳ではなく、多くの部分が他の職種と重複する(図②)。この事がまた、バイヤーや店長の仕事をわかりにくくしている原因でもある。

商品部以外の他部所の事はとりあえず除外して、商品部バイヤーが会社の利益とどの様に関わっているかをまとめてみよう。

図③は「利益の向上」に関わるバイヤーの仕事を体系的にまとめたものである。見ればわかる内容だが、少し補足説明をする。

右側の大きなブロックが「粗利益の向上」となっている。ブロックの頭に、粗利益の向上、というテーマが来る事の意味が、すぐに答えられない様では営業マン失格だ。
小売業の人達は、日頃、口を開けば・・売上が悪い、・・売上を伸ばせ、・・売上アップの対策と、「売上」を連発、連呼する。
しかし、その言葉に惑わされて錯覚させられてはいけない。売上は最終目的ではない、手段だ。当面の目標は売上の向上であっても、すぐその先には「粗利益の向上」という本題がある事を見誤ってはいけない。

一方、左のブロックは「効率の追及」だ。最終目標が「利益の向上」である以上、当然の事ながら「経営効率」を改善するのもバイヤーの役目だ。
バイヤーに課せられる効率の追及は、大きく分けて2つある。

①.作業の効率化
②.資産の効率化

どちらも一見、バイヤーとは関係なさそうに見えるがそうではない。売場での各種作業を効率化しようとする時、商品レイアウト、棚割、什器、棚札などが重要な”与件”となる。又、作業の効率化のための「作業マニュアル」を作る場合、そのマニュアルには、商品情報が深く関わるが、その情報を提供するのもバイヤーである。

資産の効率化については説明する必要はないだろうが、念のために、在庫の適正化を例に解説する。在庫の適正化を実現するには、バイヤーと売場担当者が密接に連携し、棚割の改善、発注方法の改善、入数の適正化などを根気良く遂行していく事が大切だ。売場担当者の努力だけでは、どうにもならない事が多いのだ。

「利益の向上」という営利企業の最終目的を達成するための職務、という側面からバイヤーの仕事を体系化してみた。こうすると、日頃、商談でしか接していないバイヤーの、今まで見えていなかった部分が見えてくるはずだ。

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3. 職務内容で整理する

次に、バイヤーの仕事を一般的に言われている小売業の業務区分にそって分類整理し、体系的にまとめてみた。それが図④だ。図について補足説明していく。

①.品揃え業務

質量ともにバイヤーの仕事の中で最も大きな業務だ。メーカー、ベンダーの営業マンから見ると、品揃えの良し悪し=自社商品のアイテム数の多少、となる。つまり、メーカー、ベンダーにとっての・・本音は、自社の商品がどれだけ多く採用されているか、がその企業の品揃えの良し悪しの判断になっている、と言う事だ。

しかし、バイヤーにとっての品揃えの意味は違う。自社の業態、及び自社のMDフォーマットに合わせて、自分の部門に与えられた品揃えポジションを明確にし、そのポジションに合った品揃えを実現する事が”良い品揃え”である。そのためには、先ず「商品政策」を策定する。これが、品揃え業務のスタートになる。

②.売場づくり

※「3.販促」と「4.プロモMD」については、別の回で解説します。
図の3、4が抜けた為、本文の番号と図の番号が異なります。

業態によって違いはあるものの、バイヤーが机の上で商品リストを見ながら組み上げた「品揃え」で品揃えが完了する事はあり得ない。机上で組み上げた「品揃え」を、店舗の売場で実現しなくては「品揃え」業務は完結しないのだ。前者を狭義の品揃え、全体を広義の品揃えと呼ぶ。
一般には、狭義の品揃えを売場で実現し、店頭販促を施し、売場管理のための骨組みを作る、ここまでの業務を「売場づくり」と呼んでいる。

メーカー、ベンダーの営業マンには見えにくい部分だが、「売場づくり」こそバイヤー最大の任務と言っていい。又、バイヤーの力量の差が最も表面化するのが、「売場づくり」だ。(図⑤に「品揃えの10段階」をまとめてあるので参照)。

③.店舗指導

小売業の組織には、販売部又は店舗運営部と言った名称がついた組織がある。店舗を統括する部署だ。この店舗運営部が店舗の事は全て統括する事になっている。しかし、では商品部は店舗に関する事は何もしなくていいのか、と言うとそうはならない。商品部は商品部の立場で店舗に対し、直接、間接の対応を求められる。

直接とは、その企業内で、これは商品部の仕事、と決められている業務を指す。
間接とは、本来は店舗運営部の仕事だが、店舗運営部の人手が足りなかったり、能力不足で、やむを得ず商品部が引き受ける場合である。

実際には、直接と間接が入り交じって仕事が発生し遂行されているので、非常にわかりにくくなっている。その結果、連絡のとり方、指示、命令の権限など、店舗運営部と商品部の間で小さなトラブルが頻発する事になる。

④.数値管理

小売企業の中には、数値管理を専門に担当する「コントローラー」という職種を設けている企業もある。しかし、中小のほとんどの企業では、この業務はバイヤーが兼任している。
バイヤーにとっての数値管理は、それ自体が目的ではなく、バイヤーの主業務を遂行するための、補助業務である。
品揃えの問題点を「売上実績分析」から発見したり、粗利コントロールを徹底するためにカテゴリー毎の「値入れ-売変実績」をチェックしたり、という具合だ。

⑤.システム管理

現在の小売企業はほとんどの業務にコンピューターを導入している。その中でも小売業の中核となる業務、発注や仕入れ管理などを処理するシステムの事を「基幹システム」と呼ぶ。このシステムの中核となるのが、「商品マスター」だ。
この商品マスターの維持管理はバイヤーにとって大変な作業となっている。何事もなければ、「申請書」をチェックし、”押印”するだけで済んでしまう。しかし、ひとたびトラブルが発生すると、その処理に多大な時間を費やす事がある。「商品マスター」はPOSレジや、EOSと連動しているだけに、緊急に対応しなくてはならず、バイヤーの負担は重い。

しかし、上司や経営幹部はその実態を知らない事が多く、その事がさらにバイヤーに余計な作業を強いる事となり、増々負担がかかっている事が多い。

⑥.売場活性化

売場活性化には、いくつかの方法がある。
全面改装の場合には、改装プロジェクトが結成される事がある。その場合は、バイヤーはプロジェクトの指示にしたがって自分の部門の改装企画を立てる事になる。
部門改装では、自分で最初から最後までやらなければならない。

活性化業務は大きく5つに分けられる。企画書作り、品揃え計画、作業計画、実地作業、検証の5段階だ。

⑦.ベンダー・メーカー

営業マンにとって最も関係の深い業務だ。
しかし、実際には、バイヤーはこの業務をあまり重要視していない。と言うのは、バイヤーも組織の一員。いつ辞令が出て異動になるかわからない。自分の代に、メーカー、ベンダーの入れ替えをするのはいいが、万が一それが失敗したら、自分の評価はどうなる、と考えてしまうからだ。

したがって、前任者からの申し送り内容を基本的には踏襲しつつ、そこに自分の存在感を誇示するかのごとく、部分的なアレンジ(大勢に影響のない程度の帳合変更など)を行うという程度で”お茶を濁す”事が多いのだ。
この辺の事情はバイヤーの上司とて同じ事だ。

かくして、商品部にとって極めて重要な、ベンダー、メーカー交渉という業務は、ほとんど実行されていない。

⑧.情報、資料

バイヤーから営業マンに対し、情報、資料の要望は、ひっきりなしに来ている事であろう。バイヤーの業務を遂行していく上で、情報、資料の入手、そして整理は、目立たないながら、非常に重要な業務である。
情報、資料の範囲、種類は部門によって異なるが、膨大である事は間違いない。いつ必要になるかわからない情報、資料だからこそ、日頃からキチンと整理しておかなければいけない、とわかっていても、どうしても”二の次”になってしまうのがこの業務。
企業全体として、この業務に対する方針、政策がハッキリしていない事も問題だ。

⑨.その他

何の仕事でもそうだが、「その他」の項目には、ありとあらゆる・・・その他の業務が寄せ集められている。バイヤー業務も同じだ。今までの①~⑧の項目で整理された内容は不完全ながら、一応のスタイルが確立し、マニュアルが存在する。問題は、①~⑧で整理できなかったもろもろの業務、作業だ。

その一例をあげると、体系図にもある、「各種届出」の業務。保健所、消防署などに届け出る書類はたくさんある。新任バイヤーは、関係各部署を駆け回り、書類を作る、あるいは書類を作るための資料作りを行う。「届出書類」が仕上がっても、その書類を提出する方法がわからない。又、何人もの人に尋ね回る、という事になる。

今、仮に着任したばかりのバイヤーが「花火売場」の危険物の申請書を自分一人で作るとしたら、いったいどれだけの時間がかかる事だろう。
営業マンは、バイヤーが日頃の付き合いでは目に見えない、様々な仕事をたくさん抱えている事を知っておかなければいけない。

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4. 組織上で整理すると

小売業の一般的な組織図を示したのが図⑥だ。この図でわかる通り、バイヤーは、商品部の中のⅠ部かⅡ部に所属する事になる。さらに大きな企業でバイヤーの数が20名を超える様な場合は、Ⅰ部、Ⅱ部の下に1課、2課と「課」が設けられ、そこに課長又はチーフバイヤーが座わる組織になる事もある。

この図からバイヤーの組織上の仕事について次の様に5つの事が読み取れる。

①. 会社全体の仕事

当たり前の事だが、バイヤーは会社全体の行事、等にも参加する。とは言っても、業務への参加件数は少ない。
特殊なものとして、あいさつ向上委員会、物流システム改善プロジェクト、と言ったプロジェクトへの参加がある。

②.営業本部全体の仕事

新店業務、店舗改装、販促(チラシ製作等)などの業務。又、営業本部全体の会議が月に1~2度開催され、これにもバイヤーは出席する。
又、営業部全体の業務ではないが、販売部の業務の応援、という形の業務が発生する。

③.商品部全体の仕事

商品部内の仕事は、会議が大半を占める。週定例の部会議をはじめ、活性化対策会議、部内でのチラシ会議など。

④.課の仕事

自分が所属する課独自の仕事が定例で発生する事は少ない。商品部全体の会議に先立って、課単位で事前のミーティングを行う、と言った形の仕事が多い。課長の指示で同じ課の他のバイヤーの仕事を手伝う、という事も稀れには発生する。

⑤. 自分の仕事

バイヤー自身に与えられた、担当部門に関する仕事。

この様に、バイヤーは組織に属している以上、組織全体の仕事と関わりながら、自分の仕事を遂行していく。
関わりは、時として重層的になる事もあり、こんな時はバイヤーは自分一人では、何の結論も出せなくなる。メーカー、ベンダーの営業マンはこの事を良く理解しておく必要がある。つまり、バイヤーがその状態に陥っている時、いくらバイヤーを促しても、何の効果もない、と言う事だ。重層的な仕事の例として「品揃え」を説明しておく(図⑦)。

5. 時系列で整理すると

バイヤーの仕事は、定例(ルーチン)と非定例(スポット)に分けられる。
定例には、週、月、年の単位がある。
非定例には、予め発生が予測されるものと、まったく予測できなく突発的なものとがある。

①.週の定例業務

バイヤー業務の大半は週を単位として遂行されている。小売業の「週」は月曜日に始まり日曜日に終わる。これにはハッキリとした意味があるのだ。間違っても「日曜~土曜」のカレンダーを使った企画書を作る様なミスは犯さない様に。

週業務の一例を図⑧に紹介しておく。各企業によって、業務名が異なったり、曜日の割り振りが異なるのは当然の事だ。したがって、営業マンは、自分が担当する企業の週次業務スケジュール表をキチンと整理しておく事が大切。

週次業務スケジュールが明確になっていない、スケジュールが決まっていても、イレギュラーが多い、という企業はレベルが低いと判断して間違いない。

②.月の定例業務

週に比べて月は定例業務が少ない。又、定例とは言っても、曜日との関係で日付が変動する事が多い。したがって、実際には、月の第1月曜日、とか言う具合にスケジュールを決める事が多い。
ただし、月末業務については、曜日に関係なく「月末」が業務遂行日になる事が多い (図⑨)。

③.年の定例業務

「月」と「年」の間に「四半期」と、「半期」の業務がある。ただし、四半期、半期は、実績数値の報告、分析レポート等が中心で、他の業務はほとんどない。

「年」の業務は、年度始めと、年度末に集中する。年度始めは、年度計画の発表等、計画に関係するもの、メーカー、ベンダーへの挨拶など儀礼的なものが中心。
年度末の業務は、当該年度の決算数値作成に関するものと、新年度の計画作成に関するものに分けられる(図⑩)。

週、月、年、いずれの定例業務も、イレギュラーの発生が多く、毎週、毎朝必ず変更が発生し、その都度修正したスケジュールが組まれる。

したがって、メーカー、ベンダーの営業マンは、当初のスケジュールを把握する事は当然として、修正スケジュールを素早く入手する手立てを立てておく事が大切だ。

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6. 商談は目的ではなく手段

“ダメなバイヤー”の典型として挙げられるのが、商談ばかりやっている”商談バイヤー”だ。メーカー、ベンダーの営業マンの立場から見ると、商談を多くしてくれるバイヤーが”良いバイヤー””頼りになるバイヤー”という事になるかもしれない。しかし、その判断はまったく逆だ。

「商談」は重要な業務であり、バイヤーには欠かす事ができない。しかし、商談はあくまで「手段」であって、「目的」ではない。この事を忘れて、勘違いして、商談に明け暮れるバイヤーはどうなるのか。

①.商談の事前準備ができない

次から次に商談を入れるものだから、1つ1つの商談について、事前に内容を検討する事ができない。メーカー、ベンダーの営業マンが事前に商談用の資料を送っておいても、目を通す事すらしていない場合もある。こんなバイヤーの場合、当日の商談内容について事前に上司との意見交換もなく、根回しもしていない。したがって、商談をしても、その場で、自ら決裁できる事はほとんどない。

②.商談の事後処理ができない

先に書いた通り、バイヤーの週スケジュールは、予め決まっている。つまり、商談日の翌日からは、別の業務を遂行しなくてはならないはずだ。

“商談バイヤー”は商談日に、目一杯、商談を組んでしまうから、朝から晩まで、次から次に商談消化していく。商談を消化する事と、商談内容を消化する事は違うのだが。週間スケジュールの中に、商談日に行った商談内容をじっくり検討し、次の行為計画に発展させるための業務をキチンと組み込んでおく事が大切なのだ。

ところで、「商談」とひと言で表現しているが、その内容は多岐にわたっており、複雑だ。
「商談」の詳細は、本セミナーの後の回で詳述するので、今回は商談の種類についてのみ、図⑪に整理しておいた。

 

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7. 店舗に関わる仕事

小売業の組織では、店舗に関わる業務は「店舗運営部(販売部)」が担当する事になっている。
しかし、店舗運営部の中で、商品及びベンダー、メーカーに関わる業務は、販売部の対応とは別に、商品部は商品部なりの対応をする事になる。
その業務を大別すると、次の様になる。

①.連絡、指示

この業務に費やす時間の割合は、ベンダー、メーカーの営業マンには想像できない程に高い。もっとも、優秀なバイヤーは手際よく片付け、ダメなバイヤー程に、要領が悪く、同じ事を何度も何度も繰り返している。

本部からの「連絡書」は、その企業独自のフォームが決まっていて、バイヤーは、連絡内容をこのフォームに書き込む事になる。しかし、緊急の場合とかになると、バイヤーが勝手にメモ用紙に書き込んでしまったり、「連絡書」を作らず電話連絡で済ませようとして、トラブルが生じる。

「連絡方法」は、配送便で送る場合、FAXで送信する場合、インターネットのメールで送信する場合がある。時間に余裕があるか否か、又連絡する内容、量によっていずれかの方法を選んでいる。

「連絡の相手」・・・バイヤーが連絡、指示をする相手は店舗の当該部門の担当者だけとは限らない。内容によって、店長、副店長、売場主任、商管担当など、その都度相手を選ぶ事になり、意外と神経を使う。相手の選択と、連絡手順を間違えると、トラブルになったり、店舗から反発を買う事にもなりかねない。

②.トラブル、苦情に関する業務

商品、及びベンダー、メーカーとの取引に関するトラブル、苦情は、全てバイヤーに寄せられる。バイヤーの所に入ってくる経路は、直接に電話、メールで入る場合、店舗運営部のエリアマネジャーを経由する場合、会議で発言される場合、と3つある。トラブル、苦情の主な内容は図⑫にまとめた。

 

③.要望、提案

緊急性はないが、将来的にはこうして欲しい、こんなMDに改善したらどうか、という店舗からの要望、提案がバイヤーの所に寄せられる。寄せられる方法は、トラブル、苦情の場合と同じだが、企業によっては「商品要望書」「提案書」などが制度化している場合がある。

又、①、②の内容ともに、お客様から直接受け付ける「お客様の声」の様な制度を設けている企業もある。

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8. バイヤーのスケジュール管理

バイヤーのスケジュールは、2通りある。

A.月次スケジュール
B.週次スケジュール

月次、週次スケジュールともに、先ず第1に会社全体、第2に商品部全体、そして第3にバイヤー個人のスケジュール、という手順で決められる。

ところが、往々にして第1、第2のスケジュールがなかなか決まらない。理由は、社長や部長が出張中で決裁が下りない、とか言うくだらない理由なのだが。

しかし、組織人としてのバイヤーには、上司や幹部を無視して自分のスケジュールを通す力はない。そこで一応仮のスケジュールを組んでおくのだが、その後に決まる会社全体、商品部全体のスケジュールの前には、各々のバイヤーの仮スケジュールなど無視される事が多い。

「スケジュール表」・・・バイヤーのスケジュールは、決められた書式にバイヤー自らが記入し、上司に提出すると言うルールになっている事が多い。最近ではパソコンのスケジュール管理ソフトを使っている企業も見られる。いずれに、バイヤーのスケジュールは、上司の決裁を受けて、正式に確定する。

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まとめ

いかがでしょうか? 理解できましたか。

“とんでもない。かえってわからなくなってしまったョ”という方も多いと思います。
それでいいのです。

今までは、バイヤー業務の表面しか見ていなかったので、簡単にわかったつもりになっていただけなのです。それが表面の皮を破って一歩中に踏み込んだトタンに、迷路にはまり込んでしまったのです。

しかし、決して迷路ではありません。よくよく目を凝らし、じっくりと観察すれば、それなりの”道筋”がハッキリと浮かび上がってくるはずです。

今回のセミナーを契機に、皆さんも自分が担当している企業の「バイヤーの仕事」を整理してみてください。営業マンの仕事である営業活動とは何の関わりもない様に思うかもしれませんが、騙されたつもりでやってみてください。

皆さんの「バイヤーの仕事に関するレポート」が仕上がる頃には、キット営業成績は上がっているはずです。